真珠パールエッセイ・私の真珠物語
  〜「私の真珠物語 パール・エッセイ集VOL.4」 最優秀賞〜
◆パールと校則     近藤 寛之

画像  真珠には、深い思い入れがあります。僕が、初めて女の子にプレゼントしたのが真珠の指輪でした。そして、それにまつわる忘れられない出来事もあります。

 高校二年の時、告白されて同じクラスの女の子と付き合いました。
 僕も前からなんとなく良いなぁーと思っていた子だったので、電話で「付き合ってください。」と言われた時、とても嬉しかったのを覚えています。
 付き合い出してからは、一緒に学校から帰り、その帰り道で二人でお好み焼きを食べたり、途中にある商店街で買い物をしたりしました。また、日曜日にはサイクリングをしたりして、楽しい日々を過ごしていました。
 彼女はとても優しくて朗らかで、仲良くなってからますます僕は彼女のことが好きになりました。
 彼女の誕生日の前、僕は何をプレゼントしようか迷いました。なにしろ女の子にプレゼントをあげるのは初めてだったからです。
 (あまりに高すぎるのもなんだし…。かといって安物すぎるのはなんだか愛情が無いみたいだし…。ヌクグルミ…は子供っぽいかなぁ?ブランドものの洋服…予算が…。口紅…化粧する年でもないし…。)
 長い間考えあぐねたあげく僕は、僕と彼女が大好きなユーミンの歌の中の『真珠のピアス』からヒントを得て、真珠の指輪をプレゼントすることにしました。タイトルのままピアスを買うと、別れる暗示を示す歌詞が逆効果なので、ネックレスと天秤にかけた末指輪に決めました。
 しかし、その値段の開きとバリエーションの多さに少し驚きました。(男が普段真珠のアクセサリーを買うことはないので)。イミテーションのものなら500円くらいから、高いものは際限なく…、また黒真珠っていうものがあるのもその時知りました。
 結局僕は二万円くらいの、デザインの可愛い真珠の指輪を買いました。
 彼女の誕生日は日曜日だったので、僕は駅前のハンバーガー・ショップに彼女を呼び出して、プレゼントを渡しました。
「あの…これ…大したもんじゃないけど…。」
「え…。」
 彼女は絶句しました。
(どうしたんだろう…。気に入らなかったのかな?いや、でもまだ開けてないしな…。)
とか僕が考えていると、彼女はそれを持ったままうつむいて黙ってしまいました。
「どうしたの?」
 僕が聞くと、彼女は小声で
「嬉しくて…。」
 と言います。よく見ると彼女は泣いていました。
 驚いたのは、次の日教室で見かけた彼女が、その指輪をしていることでした。教室ではあまり会話をしない僕らですが、その時ばかりは彼女に近づいていって、
「ちょっとそれはまずいんじゃない?」
 と言いましたが、
「平気よ。」
 そう言って彼女は指輪を外しませんでした。
画像  二、三日後、彼女は職員室に呼び出されました。案の定パールの指輪が見つかって、生徒指導の先生に没収されたみたいでした。僕らの学校はとても厳しい進学校だったので、ピアスなどのアクセサリーを付けるのは禁止だし、指輪をつけるなんてもってのほかでした。
 その次の日、彼女は学校を休みました。心配だったので彼女の家に電話すると、彼女のお母さんが出て、彼女が電話に出る気が無いことを告げられました。
 彼女が学校に来なくなって一週間経った頃、僕は決心して指輪を取り戻しに行きました。生徒指導の先生に、その指輪は、僕達が付き合っていて僕が誕生日にあげたものであること、彼女にとってとても大事なものであること、彼女が塞ぎ込んで一週間学校を休み続けていることなどを話し、返してくれるよう説得しました。
 先生は、二度と彼女に付けてこさせないことを条件に、指輪を返してくれました。
 僕は、彼女の家までそれを持っていき、
「もう絶対つけてきちゃだめだよ。」
 と言って、ちゃんと学校に来るように説得しました。
 翌日、彼女は元気に学校に姿を見せました。指にはあのパール・リングは付いていません。僕はほっと胸を撫で下ろしました。
 しかし彼女の鞄をよく見ると、あのパール・リングがキーホルダーになってそこに付いていました。


愛媛県漁連 真珠課 愛媛県漁協 本所 真珠課
〒790-0002 愛媛県松山市二番町四丁目6番地2
TEL:089-933-5117 FAX:089-921-3964
フリーダイヤル:0120-42-5130
E-mail:m-shinju@ehimegyoren.or.jp

愛媛県水産会館